映画「ゲット・アウト」を分析してみた【ネタバレあり】

新型コロナウイルスによる巣ごもり生活で漫画や映画にお世話になったAlouetteでございます^^

 

 

我が家ではスカパー!を契約していますが、去年からオンデマンドのNetflixも契約しました。しかしこの巣ごもり生活中にAmazon PrimeとU-NEXTも契約(笑)。色々と比較してみましたが、やはりNetflix1つに絞ろうかと思っています。

 

 

そのNetflixで見た「ゲット・アウト(2017年・米)」という映画がなかなか面白かったので自分なりに分析してみました。

 

 

 

 

Alouette
英語がそこまで得意ではないので、解釈が間違っているかもしれません!

 

「ゲット・アウト」ってどんな映画?

 

2017年にアメリカで製作された映画です。アカデミー脚本賞を受賞しています。ジャンルはホラーコメディ

 

 

Alouette
ホラーでコメディー???

 

 

怖いんだか面白いんだかわかりませんよね。でも見終わってみると「これは確かにホラーコメディだw」と納得させられます。

 

 

ホラー的な部分は、うーん、ヒッチコック(古いですね…)のサスペンスみたいな雰囲気です。そのサスペンス要素にチョイチョイ笑えるシーンが入っています。ただ、その笑えるシーンは本場のアメリカ人やアメリカ文化を理解している人でないとなかなかツボがわかりづらいのかもしれません(ぶっちゃけ私もよくわかっていません)。

 

 

根本にあるテーマは「レイシズム」つまり「(黒人)差別」です。しかし、今までの差別をテーマにした映画と違うのは、差別している側の人間が「自分は反差別主義者だ」と思い込みながら潜在意識で差別をしている、という点です。これがなかなか興味深い。映画がつくられた当時はアメリカ初の黒人大統領(オバマ大統領)が登場した頃で、一見「差別意識は一掃された」かのような雰囲気が漂っていました。が、実際は・・・(以下略)。そんな人々の心の奥底を映画を通して上手く表現しているのがこの「ゲット・アウト」です。

 

~ネタバレなしのあらすじ~

黒人フォトグラファーのクリスが白人の恋人ローズの実家に行くことになる

ローズの家族は「人種差別なんかしない良い人達」だった

でも黒人の使用人いるし、家族にも妙な違和感を感じる

翌日近所の人達(ほぼ白人)が集まってパーティ開催、良い人ばかりだがなぜか居心地悪い

みんなと話せば話すほどなんか変!クリスの不快感はMAXに!!!

そして明らかになる驚愕の真実・・・・

 

こんな感じかな~。説明下手ですみません(汗)

 

ここからネタバレありなのでまだ見ていない方は注意してください!

 

 

 

「ゲット・アウト」の分析など

 

 

突然ですが私は15年ほど前、ロサンゼルスに2年ほど住んでいた経験があります。ロスについてすぐに運転免許証の手続きをすべく、日本でいう所の免許センターへ行ったのですが、そこで黒人男性に声を掛けられました。アメリカ人男性は軽い気持ちで声をかけてくるのですが、その男性も「へー、Japanからきたの?俺Tokyoへ行ってみたいんだ~」などと他愛もない話をしてきました。

 

 

私と彼が話していると、突然別の黒人男性が彼に近寄ってきました。

 

 

「Hey, sup man?」

 

 

「Hey bro.」

 

 

みたいな感じで私と話していた黒人男性とハグをしました。そしてペラペラと何か話していると後から話しかけてきた男性がCDのようなものをカバンから取り出し、私と話していた男性は10ドル札を彼に渡しました。

 

その後彼とサヨナラすると、再び私の方へ戻ってきたので聞いてみました。

 

「彼は知り合いなの?」

 

「いや、初めて会ったんだよ」

 

「え?すごく親しげに見えたけど…。しかも彼からCD?買ったりしてなかった?」

 

「ああ、彼はブラザーだからさ。同じblack skinじゃん?ラッパーを目指して頑張ってるって聞いたからCDを買ってやったんだ。」

 

 

・・・そう、つまり彼は全く面識のない黒人男性が近づいてきて、CD買ってくれねーか?と言われ、もちろんOKとすぐにお金を払ったのです。彼が同じ黒人だからという理由だけで。

 

 

大げさではなく、黒人同士ってこのような仲間意識があるのです。黒人同士の独特なやり取り、言葉の言い回し、ジョークなどもあり、黒人以外が入れないATフィールドがあるのを感じたことはその後も何度もありました。

 

 

話を「ゲット・アウト」に戻しますが、そんな黒人社会のバックグラウンドを知らないまま見ると面白さがわからないかもしれません。

 

 

この映画では白人に身体を乗っ取られた黒人が3人出てくるのですが、彼らはみな「黒人なら当たり前にすること、理解できること」をしないのです。そこがこの映画の笑えるポイントなのです。

 

 

興味深いシーンをいくつかピックアップ。

 

ローガンとのやりとり

 

 

 

 

この映画の中で有名なシーンの一つ。主人公クリスは白人だらけのパーティで唯一の黒人ローガンを見つけるとホッとした様子で「キョーダイ(brotha:黒人同士で使うスラング)がいて嬉しいぜ」と話しかける。しかしローガンはゆっくり振り返り「ん・・・ああ、そうだな、やぁ。」とまるで老人のように穏やかに話します。

 

 

そして明らかに不釣り合いな白人の初老マダムと結婚しているという・・・黒人x白人カップルでさえまだマイノリティなのに若い黒人男性x白人の初老マダムなんて・・・

 

Alouette
まずありえない!

 

 

 

 

違和感ありまくりのローガンですが、極め付けが挨拶を終えて「じゃあまた」とクリスがグーを突き出すとローガンはその手を握ります

 

 

 

 

若い黒人男性同士は私が免許センターで出会った彼らのようにハグしたりこぶしとこぶしをつき合わせてコツンとやる(fist-bump)のですが普通に握手をされてさらに違和感が…。カンの良い人はここで「もしや中身は白人か?」とわかるのでしょう。

 

 

ところでこのローガン、実は冒頭で出てきたアンドレという道で突然誘拐されてしまう黒人です。

 

 

 

 

冒頭のシーンでは歩きながらTHE・黒人といった感じでスラングバリバリのセリフをラップのように言っています(笑)。

 

 

そして1930年代の音楽がかかっているクラシックカーから降りてきた男にヘッドロックを掛けられます。これはおそらくおじいちゃんが運転して、実行犯はRoseの弟Jeremyですね(ディナーのシーンでクリスに冗談でヘッドロックをかけようとしていました)。アーミテージ家の車で脱出を図ったクリスの助手席に鉄仮面が置かれていますが、アンドレの誘拐犯はこの仮面をかぶっていました。

 

 

ジョルジーナのNo, No, No

 

 

 

この若い黒人女性(ジョージナ)も中身は白人のおばあちゃん。このシーンではクリスとこんなやり取りをします。

 

Chris Washington : It’s fine. I wasn’t trying to snitch.

Georgina : Snitch?

Chris Washington : Rat you out.

Georgina : [thinks] Tattletale!

 

(訳)

 

クリス:安心しなよ、チクったりしないから。

ジョージナ:チクる?

クリス:タレこむってこと。

ジョージナ:(考えて)密告のことね!

 

中身はおばあちゃんなのでSnitch(チクる)というスラングを知らなかったということですね^^。このセリフの前にもスマホの事を cellular phone (携帯電話)と古い呼び方をしています。日本人だって今時「携帯電話がさ~」とか言わないですよねw

 

この後クリスが「白人に囲まれてナーバスになる気持ちわかるだろ?」というと急に真顔になり泣き出します。しかしすぐにその気持ちを打ち消すように「No, no, no, no, nononononono….」と続くわけですが、これは彼女も過去(中身が黒人だった頃)にローズに連れてこられ、多くの白人に囲まれた思い出がフラッシュバックしてクリスに警告しようとしたのでしょう。しかしすぐに現在の彼女、つまりローズのおばあちゃんが「No」と言って正気を取り戻したということですね。このジョルジーナ役の女優さん、なかなかの怪演ですな~。

 

 

 

ローズの部屋で見つけた過去に連れてこられたであろう黒人達の写真。↑はジョルジーナとウォルター。今時スマホで撮った写真をわざわざプリントするか~?しかも犯罪の証拠になるじゃん、というツッコミは置いておいて…。

 

ジョルジーナが”黒人だった頃”の写真は今時の普通の若者の格好。髪型が変わるとこうも印象が変わるものなのか。右のウォルター(ローズのおじいちゃん)も…。

 

Hiroki Tanaka

 

白人ばかりのパーティの中で突然「Tanaka」というセリフが聞こえてきます。

 

 

 

 

え?タナカ?今タナカっつったよね?

 

 

ここでまさかの日本人。見た目もとりあえず東洋人。

 

 

色々と調べてみるとこのタナカはアメリカで成功を収め、白人(特に富裕層)に認められ、まるで自分も白人かのようにふるまうような人達を象徴しているとのこと。

 

 

「何それ?」って思うかもしれませんが・・・

 

 

Alouette
いるんですよ、実際。こういう日本人!

 

 

在米邦人はアメリカにわざわざ移住するくらいなのでアメリカ人やアメリカ文化にあこがれを持っている人がほとんどです。とはいえ、言葉のストレスがない日本人同士、やはり仲良くなります。が、あえて日本人や東洋人とつるまないようにする日本人もいます。アメリカ人の友達を作ってアメリカ人の仲にとけこみやがて自分もアメリカ人になった!と錯覚しているような人です。特にまだ重要なポストのほとんどを白人が占めているような業界で成功した日本人の「俺、白人」感はスゴイ!(笑)。ナチスに名誉アーリア人、南アフリカで名誉白人と認定されて喜んじゃう日本人って感じですね(汗)

 

 

余談ですがこのタナカさんはリアル日本人で空手の達人だとか。だいたいハリウッド映画に出てくる日本人って日本人じゃないんですけどね~。

 

Froot Loops

 

ラストの方でクリスがアーミテージ家の面々をボコボコにしている間、偽恋人ローズは1人部屋の中で次の”彼氏候補”を物色しています。その時にダーティダンシングの音楽を聴きながら牛乳とカラフルなスナックを食べているのですが、このスナックはFroot Loopsといって、北米では子どもが良く食べるシリアルとのことです。

 

 

 

 

 

これをいい歳した大人がボリボリ食べている奇妙なシーンは、監督が聞いた、強迫性障害の人が子どもの頃に行っていた行動や好きだった食べ物などを大人になっても繰り返してしまうという話からヒントを得たそうな。

 

 

うーん、よく考えてみれば彼女も可哀想だよね。この狂った家に生まれてしまったばかりに強迫性障害なんかになってしまって・・・。

 

全ての元凶は・・・

 

よくよく考えてみたら全ての元凶はこの男↓

 

 

 

ウォルター!・・・の体を乗っ取ったアーミテージ家のおじいちゃん。この男がベルリンオリンピックでJesse Owensに負けたことが悔しすぎて黒人に対して歪んだ憧れ?を持ってしまい、Behold the Coagulaなるカルト集団を作り、家族どころか近隣住民まで全員洗脳してとんでもない犯罪に巻き込んだ張本人ですよね!

 

※ ちなみに Jesse Owens はアメリカでは知らない人がいない黒人の金メダリスト。ベルリンオリンピックでは人種差別大好きなヒトラーが金メダルをとったのが黒人だったので不機嫌になり、オーエンスとの握手を拒否したのは有名な話。

 

このおじいちゃんが全て悪いとしたら・・・アーミテージ夫妻もローズと弟も被害者だよ…。

 

最後の最後にクリスのスマホフラッシュで黒人の意識を取り戻し、ローズを殺して自分も撃ってしまうウォルター。常に帽子を被っていたのは開頭手術の痕をみられたくなかったからだったんですね~。(おばあちゃんはカツラ)

 

 

Alouette
正気を取り戻した瞬間のウォルター、迫真の演技でした

 

 

他にも「鹿なんて嫌いだから死んでしまえばいい」と言ったローズパパがクリスに鹿のはく製で殺されたり、開頭手術で頭を開けられた状態で放置されている画商ハドソンとか、語りたい所は沢山あるのですがこの辺にしておきますw

 

もう一つのエンディング

 

 

最後に、監督のジョーダンピールが考えていた1つ目のエンディングをご紹介。

 


ラストシーンは全てが終わった後にパトカーが来て「えー、もしやバッドエンド!?」と嫌な予感をさせて、実は親友ロッドだったというハッピーエンド(?)ですが、本来は警察に捕まってしまうというバッドエンドにしようと思っていたそうです。

 

あのまま捕まったら後味悪すぎるのでハッピーエンドで良かったです。ロッドのキャラが安心感ありすぎですw

 

 

ゲットアウトの感想

 

監督はKKK団のようなレイシストではなく、リベラルの皮を被った潜在意識レベルの差別を表現したかったのだと思いますが…「そこまで求める?」というのが正直な感想です。

 

アメリカって本当に色んな人種がいるので、何も白人→黒人差別だけじゃないです。東洋人を差別する黒人だっていましたよw それでも私はあからさまに態度にさえ出さなければなんとも思わないですけどね~。差別問題に疎い日本人だからかな。

 

○○人だから逮捕された!などのあからさまな差別は「ダメ絶対」だけど、意識レベル、特に潜在意識レベルの差別は、もはや差別というより嗜好なんじゃないかなと思ってしまいます。

 

映画そのものは面白かったですが、日本ではあまりウケなかったのもわかります。アメリカ人のあの独特の人種の差、差別もネタにして笑いをとるような文化を理解していないとつまらないでしょう。